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先生学
 breakthrough with growing


「観点別評価のためのアイデアと工夫」


「先生学 breakthrough with growing」の今回のテーマは、前回の「観点別評価の課題と対策」に引き続き「観点別評価のためのアイデアと工夫」。授業やテストでどのように生徒の3観点の評価材料を収集し、それを成績に繋げるのか。そのアイデアをお示ししていきます。ちょうど今の時期は高等学校や中学校では中間考査の時期やその直前ではないでしょうか。ご参考になればと思います。

(また今、5月初めの時期は「自己申告書入力と年度当初の校長面接」の学校も少なくないですね。併せて拙著ブログの過去ログをご覧ください。)


★  授業課題とテストの組み立て  

まず新教育課程の教科書や指導書をパッと見てわかるように、例えば国語であれば文法など細かい教えるべき内容が、従来のものより激減しています。では教えなくて良いのかというとたぶん違う。狙いとして科目の枠を超えて教科として複合的に学ぶことを求めているため、そこまで教科書各単元の時間数的に盛り込むのは不可能なのだと思います。まさに「言語文化」や「歴史総合」などはそれぞれの科目ごとの学習内容を、対話をして考えさせ一つの教科としての繋がりを持った知識として学びを深める、ということを優先させるのでしょう。「国語科」の中の新しい科目の「言語文化」であれば、漢文、古文などの従来の古典分野とは別物ではなく今の現代文の言葉の繋がりがあることまで教える。同時にそれによって今までの古典嫌いを抑制するのも目的。つまり今までの科目の内容も大事だということ。

しかしながら中学校や高等学校ではその元となる「知識」を授業で「教えていく」作業にも時間を掛けざるを得ない。新教育課程の目標や掲げている理想とは別に、授業自体は専門的に伝えるべきことは減らないはず。さあ、どうしましょうか。

私自身は①「授業内の小さな課題・小テスト」と②「考査前や長期休業中の課題の提出点・内容点」、そして従来の③「定期考査」といういわゆる「古典的」な三つの方法で評価するのは変えないつもりです。ただし学期末・学年末の評価のために【知識・技能】【思考・判断・表現】【主体的に取り組む態度】の3つの観点別にそれぞれ「あらかじめ分けた上で行う」ようアレンジします。では具体的にどうするのか。


★  テストの様式の工夫  

3観点での評価は、成績提出時に表すための小テストや課題、定期考査のテストでする。ではどのようにすれば機械的でわかりやすく煩雑にならない方法が考えられるでしょうか。まず定期考査で考えてみましょう。定期考査において実際にどのような工夫をしたらいいか、そのシンプルな例を挙げておきます。

  設問も3観点から

とりあえずテスト原案を作成したら、それぞれの設問は観点別3種類に分けます。テストですべてシンプルに成績を付けるため3観点すべてバランスよくなるようにしても良いです。あるいは定期テストは成績評価のための道具の一つとして捉えて、それ以外の課題や提出物、小テストやレポートなども重視する場合は偏っても構わない。しかし後述しますが、課題や提出物をその観点別評価でも「大きなポイント」とする場合は、あらかじめ教科の先生方のバラつきが無いように打ち合わせしておく、生徒への告知を欠かさず授業時や課題の出題時に必ずその重さを忘れずに伝えるべき。成績でのトラブルは成績の根拠が不明確な場合がほとんどだからです。ご注意を。

  解答欄の工夫

定期考査のテストは短期間で作成し大量に採点を求められるため、【Ⅰ  知識・技能】【Ⅱ  思考・判断・表現】【Ⅲ  主体的に取り組む態度】のそれぞれを解答用紙の解答欄ごとに観点別それぞれがわかるように「太枠」や「網掛け」など色分けを用いて活用します。また採点時にペンの色を変えたり【知識・技能】は問題数が多くなるのでその観点の設問をすべてマークシート方式にするのもよいと思います。

  得点欄の工夫

観点別設問ごとのテスト内の合計点がそれぞれ教員側も生徒もわかるように、3観点別に得点欄も3箇所作ります。そして点票に入力するための全体の合計点数も記入する欄も作ります。つまり得点欄は合計4箇所になりますね。

  観点別得点も個人で管理

成績点票とは別に、個人や教科単位で成績管理フォルダや先生個人の教務手帳などで成績管理する様式も、上記テストの観点別得点をそれぞれで転記・入力しておきます。のちには教科担当の先生方で話し合い、学期末と学年末にABCの観点別評価に繋げられるよう独自の計算式も入力します。


★  課題に求めるものと観点  

私自身はテストにおいて【知識・技能】【思考・判断・表現】に2分野の観点はテストで採点しやすいと思いますが、【主体的に取り組む態度】を設問としたときに採点基準が作りづらくまた採点に時間がかかり効率的に評価できない、と考えています。特に共通問題で複数の教科担当の先生がいる場合はなおさらです。そのため、3つ目の【主体的に取り組む態度】については「定期考査には入れず、課題や提出物で評価」します。(……当面そのつもりです。) 

課題内容の方向性は、生徒個々が授業やそのための準備や発展的学習にどの程度積極的に取り組んだか、テーマを決めて絞ります。評価基準は授業時の挙手による発言回数、まとめのレポート課題の内容です。内容の優劣はもちろん字数、独自性、現実の生活範囲まで学習内容を広げて捉えたものかどうか、偏りなく普遍性のあるものかどうか、などの観点でAからCの3段階で評価します。生徒に対しても説明するなら「ノートの内容を写して提出しただけだとC」「学習した内容の上に独自の視点で問題提起しているからB」「発展的な内容に繋げて具体的な解決策やアイデアまで示しているからA」などと基準を提示できると丁寧です。そして優秀な内容のものは生徒全体の前で示して褒めるのも良いでしょう。この3つ目の【主体的に取り組む態度】については、生徒各自が自分の成績に納得できれば良い。生徒に「どうして私はBなんですか?」と言われてはダメ。(特に近年では保護者も先生への信頼が欠けると我が子を守る立場でかなり細かな評価基準について求めてきますよね。もちろんそれは成績が進路に直結するからでしょう。保護者に万一噛みつかれても、評価には感情が入らず「誰が見てもそうなる」というきちんとした客観的基準を示すことができなければいけない。我々教員側のしっかりしたブレない評価基準は大切です。)


(終わりに)

細かい見方をすると3観点のどの分野にも属する、いわゆるどの観点か厳密に分けることができないようなテストの設問や課題演習もあるはずです。まず新教育課程導入の初年度にあたる今は混乱が生じるのが当然。黎明期だからこそわかりやすく「ザックリと」観点上の評価にあたる、生徒個々のそれぞれの取り組みを分類しておけばいい。(……それくらいの気持ちでないと我々が混乱します。と同時に疲弊します。笑)

そして、今後その基準をそれぞれの学校のレベル、それぞれの教科・科目の特質、預かる生徒の特徴を把握した上で、少しずつ評価方法の観点分け改善していけば良いでしょう。最初からパーフェクトにはいかないものと割り切って、しかし文科省の指示様式からは外れない程度に評価する。従来の慣れた評価方法と擦り合わせながら新たな成績の付け方を構築していく。まずは各教科の先生方で無理のない程度でトライしてみましょう。私の経験では「テストや課題は難しめ。評価は優しめ」がいちばん生徒とのトラブルは少ないですね。ご参考に。ではまた!