2020年02月

IMG_4198

「部活動の宣伝はこうやる!」



どこの学校も特色ある学校作りをする上で、学業面、進路実績、学校行事、きめ細かい生徒指導など、様々な取り組みを求められていると思います。それらの中でも「部活動」については、学業の成績面とは関係なく生徒の活動場所・居場所であると同時に注目される場です。そして子どもたちにとっても学年の枠を超えた、クラスとは別の人間関係を構築できる場所でもあります。今回も前回に引き続き、新学期に入る前に準備しておきたい部活動関係のテーマを取り上げます。


指導者やそれ相応の生徒が部内にいるのなら、校内でも、対外的にもアピールをしやすい項目の一つです。学校における放課後の活動の活性化や校内外に注目を集める団体となり、クラスの人間関係以外に「所属する場」を作っておく意味でも、学校生活における部活動は教育的な観点だけでなく、学校側からのPRポイントともなる大事な要素のひとつです。また場合によっては、卒業生や地域の方々までもが誇れる場ともなり、継続的な支援を受けていくことも考えられます。


今回は「部活動の宣伝」。現役生徒ばかりでなく、保護者、教職員、管理職、志望進路とする小中学生および受験生、OBOGなど卒業生、地域住民、も満足する部活動の広報をご紹介し、その準備と広報活動の方法についてアドバイスしていきます。「部活動の宣伝と新入部員の勧誘はこうやる!」です。



●  校内ポスター掲示  


自校の生徒はもちろん教員、生徒は自校の「ホームページ」については、あまりというかほとんど見ません。見るとしたら、台風接近などで休校になるかどうか、卒業後に調査書や卒業証明書などの関係書類を作成してもらう時、そんな時くらいです。(苦笑)


校内の掲示板のほか廊下や階段の目に付くところにアピールする目的で、当該部活の「ポスター」掲示をしましょう。ポスター自体は部員やマネージャーに作成させてもいいでしょう。先生が手を入れたプロ並みの物よりも、手書きで画用紙や模造紙に切り貼りをしたり、部員みんなの集合写真を貼ったりして、「手作り感」がある方がかえって好ましい。

新入生にアピールしたいなら入学式や新入生説明会・ガイダンスなどの前には準備しておきます。ただし、顧問の先生の内容確認は必須。また生徒会の押印が必要な場合もあります。

ポスターには、定例となり決まっているのなら新入生対象の説明会や歓迎会、あるいは歓迎ライブやコンサートの日時と場所なども記載しておくと、あらためて告知するポスターを作るといった「二度手間になる」こともなく、より良いポスターになりますね。



●  式典での表彰  


始業式、終業式、年度末の修了式などの際に、各団体や地域からの賞状やメダルを預けて、校長から当該生徒らを「表彰をしてもらう」のも大切。ポイントは、全体から見てどんなに小さな大会でも、市区町村の申し込み制の大会であろうと、その生徒と部のために実績結果を残しておいてあげること。そして賞状、トロフィー、優勝カップ、メダルなどを、式典後の表彰時に、あらためて学校長からの賞状の読み上げとその授与をお願いしておきます。(生徒の「氏名のフリガナ」はすべて付けておくことを忘れずに!  名前を間違えて表彰されても名誉どころか笑われて終わってしまいます。本人にとってはがっかりしてしまう場に。そういうことほど細かな準備を。)


そういう時に壇上に立つのはその生徒の表彰になるばかりか、所属クラブや所属クラスや友人達、顧問の先生方も間違いなく喜んでくれるはず。部活動に関心の無い先生方にも注目してくれます。それもまず好意的に。

壇上に上がる本人にとっても、一生忘れない思い出になります。その保護者の方も。団体競技や文化部の団体部活であれば、表彰時に受け取る代表生徒とは別に、そこに関わった「部員全員を壇上に上げたい」ものです。それも打ち合わせ一つでできることです。面倒がらず子どもたちのために下準備を。



●  学校ホームページ  


近年の学校では、従来の紙ベースのパンフレットも変わらず作製・配布して見られてはいますが、ネット時代を反映して手軽に検索できる「学校のホームページ」を訪れて確認する志望生徒や保護者がほとんどです。

こちらはパソコン関係が得意な先生数名が、職員会議などで情報や写真の提供や、顧問として担当記事そのものを作るよう呼びかけをします。そして主任の先生や管理職の了承の上、学校ホームページにアップされることが多いですね。

部活の顧問によって広報活動にも温度差が出てきますが、できるだけ多くの部活動の顧問の先生から、学校の総務部関係や募集対策委員会関係を、学校説明会関係の先生方に情報提供することは、大事なことです。 


面倒がらずにルーティンとして「月に一度」、無理なら「学期に一度」、あるいは「主要大会やコンクールの時ごと」に、部活動の記事は更新したいものです。年度当初に保護者向けとしてプライバシーポリシーを取っておくと良いでしょう。



●  部活動独自のホームページ  


プラスアルファで余裕があるなら、保護者の中でこういう作業を喜んでしてくれる方でこまめに更新してくれる「部活動独自のホームページ」は有効です。パソコンが得意な方にお願いしてみましょう。ただし、こちら側からの情報や写真などの継続的な提供が大切です。それと、前述した写真の扱いなどについてプライバシーポリシーを、入部時に全員分取っておくことも大切な準備です。それでなければ部活動の保護者会を事前に開いておいて確認、了承を得ておく。

動画については慎重に扱いましょう。ダンスなどはその動きそのものが入るものがあると良いでしょうが、でも、そういったものは子どもたちが得意のSNSにお任せして、こちらのホームページでは全員での集合写真など最低限で良いと思います。競技種目によっては対戦相手が映ってしまい、取り扱いが難しくなるのでくれぐれも気を付けておきたい事項です。


この部活独自のホームページは、生徒本人よりも保護者の方々や、当該の学校を志望している生徒に注目を集めていく傾向があります。それゆえに表彰された生徒名ばかりか大会名称や主催の団体名なども、うっかりでも間違った情報だけは避けたいものです。



●  体験参加型練習会・見学会  


新入生の入学後に行うものであれば、放課後に複数で参加しやすく、上級生とも交流できる形態の「体験会」が好まれます。それは現実的な厳しい内容のものでなく、楽しく終われる体験型のものが良いでしょう。ライブや演奏など見学系の「見学会・鑑賞会」であれば、その後に直接声を掛けられる時間も準備しておきます。 


顧問の先生は、体験や見学に来た参加者名簿の枠を作り、入場時に記入してもらう。新入生対象であれば新入生の学年の名簿一覧を一枚プリントしてもらい、その名前の横にチェックしてもらって参加・見学してもらい、足跡もしっかりと残しておいてもらいます。後日あらためて声をかけるためでもあります。 

できるだけ顧問の先生は裏方で、新2、3年生にどんどん動いて勧誘や声掛けをさせることが大事です。あくまでもこの部活動は「生徒主体」だと実感してもらう。やらされてきた小中学校時代から解放されたい生徒は少なくありません。小さな失敗よりも達成感。成就感。


また、先ほどお話しした体験や見学に来た小中学生対象に、当該部活の宣伝のため、あるいは受験生確保のためにも、長期休業中に最低でも1日、できたら2〜3回でいいので見学会や体験会を実施するのも大きなポイントになります。「学校のホームページに上げておく」とより宣伝効果は高まります。ホームページへのアクセスも増えますし学校が校外にどんなことに取り組んでいるのかをアピールすることにもなるので管理職からも評価されます。

体験講座の内容と手際が良く、参加生徒本人だけでなく保護者の方にも評価が高ければ、その部活や学校の評判も上がります。この際、人数の把握や参加生徒の在籍している学校、所属チーム、経験年数などプロフィールを確認し、場合によっては後に連絡するためにも、参加時に名簿記入をお願いしておきます。 


当然顧問としてというよりも、入学前であればその名簿やプロフィールの個人情報などは守秘義務が付いてきますので、名簿や写真などの扱いについてはくれぐれも細心の注意を払ってください。

そして「怪我の時」には「応急処置」はできるものの、大きな怪我には対応できない、保険などは各自でお願いする、といった万一の時のリスクマネジメントもしっかり忘れずに明文化しておきます。



(終わりに)


宣伝するのはアピールしてその部活動を活発にするだけでなく、生徒の生活や人生、その子どもたちを抱える学校そのものも元気にしてくれます。いわばウインウインの関係になるのです。(もちろん、問題が起こっておおっぴらになれば、その逆にもなりうる恐れもはらんでいますが。)


教員であれば、その宣伝の準備と新入部員の確保で満足してしまうのでなく、半ば永続的に歴史や伝統を有するような、その部の仕掛けの一つ、そういったものとして定着するよう取り組みたいですね。





IMG_4076

「部活動の年度まとめと新年度に向けての引き継ぎ」



さて、3月の年度末を前にして、この時期の学校は受験、進路決定、そして卒業を迎える時期となり、現在の部活の生徒との今後の展開を見据えながら、新年度に備えて新入生を迎える準備をする時期になります。慌ただしい4月には、目の前の業務に追われ、部活関係は生徒に任せて取ってつけたような対応に終始してしまう顧問の先生も少なくないはず。3月には現在の顧問の先生の異動や退職に伴い、主顧問の交代など様々な引き継ぎもありますね。


さて、今のうちにやるべきことを整理しておきましょう。今回は「部活の総括と引き継ぎ」です。その準備と具体的事項についてアドバイスしていきます。


  今年一年の総括  


今年度の総括には、その内容として学校内のことと学校外の対外的なこと、両方に関わることがあります。先生ご自身が当該部活の主顧問でもサブ的な副顧問でも、引き継ぎをしなければならない側でもされる方の側の方でも、いずれも必要なことを挙げておきます。後回しにすると結局先生ご自身が面倒なことにもなるので、是非チェックしながら確認してください。


  顧問と役割の再確認

このことは校内外の人事にも関係しますので、主顧問であれば校長など管理職に要望をあらかじめ出して、お願いすることもしておきます。

「名前だけ顧問」の先生を存在させずに、少しでも役割を担ってもらうのがいい。それはたとえ専門外の、育児や介護で忙しい先生であっても、です。会計など学校の勤務時間でできることはあるはず。顧問間の人間関係、生徒の関係、その保護者との関係を考えると、卒業アルバムの写真にだけ収まるのはいかがなものでしょうか?  限られた関係性だとしても構築する義務が顧問にはあります。


  会計決算

教科や分掌などと同様ですが、公的に支出された加盟費や大会参加費とは別に、部費などを徴収している場合は、生徒を通してでも保護者宛にプリント配布しておきたいものです。透明性を確保するためにも通帳のコピーや領収書も保管しておきましょう。


  大会結果や実績

練習試合はともかく公式戦などの大会成績は、その時期とともに簡単にでも記録をして残しておきます。学校の広報誌における記事掲載の依頼にも対応する材料になりますし、部のOB会や卒業生向けにもわかりやすい活動実績になります。


  問題点や課題

現在の当該部活の問題点は必ず顧問間で共有しておきます。次年度に向けてこの時期に確認しておくのが大事。特に「指導者の異動や退職」「主顧問や監督の交代」など大きな問題については、管理職にもあらかじめ伝えておきます。


⑤「三送会」の準備

「三送会」つまり「三年生(卒業生)を送る会」のことですね。日程・場所の確保、現役生と卒業生・保護者の方々への連絡、進行と挨拶の担当、会場装飾、余興やアトラクション、ビデオ上映、記念品授与など、流れの確認しておきます。終わり良ければすべてよし、ですね。いったんマニュアルを作って、それを毎年改定していけば生徒も思い出し良いものにしていけると思います。



  新年度に向けて  


1)校内的な事項


  次年度の顧問と役割分担を確認

上記の「今年度の総括」の一つ目にも書きましたが、新メンバーにおける主顧問・副顧問といった顧問の体制だけでなく、会計担当や土日の引率、居残りの曜日などまで決めておきたい。次年度、慌ただしくても4月当初に必ず顔合わせの時間を作りましょう。


  中心生徒(=部長、主将)の把握

いわゆる生徒の責任者と中心となるメンバーを把握しておきます。と同時に、生徒間で問題のあることも耳に入れておく。しかし一方からの情報だけであれば参考程度に。(……生徒からであれ教員からであれ、です。)

生徒に幹部を自分たちで決めさせて、その子どもたちを中心に様々なことを考えて決めさせ、そして実行させる、いわゆる「ボトムアップ型」のスタイルを取り入れていくと、生徒の自主性も芽生え、先生との関係も程よい距離感になり関係も良くなり、大会前も円滑に運ぶようになります。


  活動日の確認

新年度のグラウンドや体育館など学校内の施設、あるいは外部施設に関する使用の曜日や時間帯を確認します。(対外的な事項になりますが、外部施設の場合は予約や許可証、利用時に掛かる費用についても確認しておきます。)また活動時間と最終下校時刻も各部活の生徒および保護者には伝えます。


  年間スケジュールの確認

次年度の1年間の流れの確認と、主要大会(公式戦・定期戦)や定期演奏会など、今年一年の流れを振り返り確認します。3年生引退時期と新チーム立ち上げの時期もおおよその目安になる時期を見通し、顧問間で確認しておきます。

新入生勧誘と入部、当該部活の保護者会でのプリント配布も視野に入れて、学校行事も高体連・中体連の年間行事計画と見合わせて複数で流れを把握しておきます。


  次年度予算と購入物品、大会参加費の確認

大きな変更点もなく例年通りであっても、複数で、かつ具体的に確認しておきます。


以下については、必要がある場合プラスアルファで。


(⑥幹部ミーティングの日時設定の予告)

ここでは先生からの一方的なものにせず、新しい代による目標、チームスローガンや約束事の設定なども行います。


(⑦新入生説明会・歓迎会の日時設定)

当該部活の新入生入学後の説明会や歓迎ライブや発表会の日時・場所の設定もしておきます。

また部活動の「保護者説明会」も年度当初(5月以降でも)実施しておくと、保護者との風通しもよくなってトラブルになりそうな時に解決に向かう率が高まります。



2)対外的な事項


①高体連・中体連の新年度の登録と振込

年間の加盟登録と大会の申込み。予算の執行と振込の手続き。経営企画室や事務室で人事異動があり滞ることがあるとたいへん。すべては現顧問の先生の業務であり責任となります。これを忘れると公式戦に出場することができなくなるので責任重大です。くれぐれも年度当初の忙しい時期の加盟登録や大会参加費の振込先と期日の確認を忘れずに。


②合宿など宿泊行事、関係する事項の確認

時期、場所・施設、予算、予想される生徒の参加人数、引率顧問の確認。引率の先生が今年度から大幅に変更する場合は、業者や宿の方、合同合宿であれば関係する部活の顧問の先生に、連絡し説明します。


③外部指導員、コーチの指導継続のお願い、前顧問と指導費の確認

自校の教員以外に指導者として名前を連ねている方や、支援してくださる方がいる場合、基本的に指導の継続をお願いするのであれば、その指導の曜日や時間帯、それに伴う指導費の金額や出どころ、支払い方法も確認しておきます。



3)校内外に関する事項


こちらについては、人事も不確定なこの時期の段階では「連絡先の引き継ぎ」のみで良いでしょう。


・顧問間の緊急連絡先

・生徒の緊急時の連絡先

・定例的にあるいは頻繁に行う練習試合の相手校の電話番号と顧問の先生の連絡先

・保護者および責任者の連絡先

OB会代表者の連絡先

・高体連や中体連の地区の責任者にあたる先生の連絡先

・管理職の先生の緊急連絡先(生徒の事故・大きな怪我、合宿等宿泊先での食中毒など大きなトラブルに備えて)


以上のようなところを押さえておきます。余裕があるなら、新学期には新体制発足の報告をします。そうしておくと先生ご自身や当該校の部活、チームの印象は良くなります。



(終わりに)


「部活動」はあくまでも学校生活においてはプラスアルファのものです。部活動は、生徒自身が入部して、引退とは別に「辞める=退部する」ことも可能。授業や学校行事それに伴う生徒会や委員会活動については、生徒でいる限り辞めることはできませんから、すべての生徒の活動ではそちらがやはり優先されます。

それでも、昔から今に至るまで、どんな場所のどんな規模の学校においても部活動が存在し、先生が入れ替わっても、生徒会・委員会活動とは別に任意で参加する形態のものであるにもかかわらず現在も存続している。それは、やはり部活動という場に、子どもたちの所属意識やアイデンティティ、有意義な時間が確かにあるからでしょう。その子どものその後の人生にとって大きな経験になっていることも確実にあるはず。


部活顧問の負担の問題があるのは当然承知していますが、外部指導員・部活動指導員の導入促進を取り組もうとしているような段階の現状では、今日の日本ではまだ我々教員が避けることができない問題です。

……その問題については部活動運営のやり方、部員生徒との距離感、顧問間の関係作りなど、あらためてテーマとして取り上げる予定です。)


また「専門の種目の部活指導をやるんだ!」「そのために、その素晴らしさを伝えるために学校の先生になったんだ!」という積極的な先生も少なくないはず。そういう先生は、その熱量とやり甲斐があるのですから、やり方さえ間違えなければ子どもたちにとって大きな存在価値が生じますし、学校にとっても、高体連や中体連の専門部にとっても、価値ある戦力なのです。


良いものは見直しながらも継続して、また時には改革をして、そして将来的にはそれを引き継いでいく。「部活動」に限らず、学校とはそれ自体そういう存在ではないでしょうか。


次回も引き続き部活動関係をテーマにします。新年度の部活動の立ち上げ時の取り組み。部活動の新入生勧誘に関するものをテーマとします。次回は「部活動の宣伝はこうやる!」です。

↑このページのトップヘ