2020年05月

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「コロナ後の授業はこうなる!」


まさにコロナ禍によりすべての学校は休校に、子どもたちは家庭学習を余儀なくされました。そして現在は完全再開に向けてまず時差登校および分散登校へと学校現場は動きつつあります。我々教員も未曾有の経験でしたが、日本社会そのものが今回の状況をきっかけに学校教育の重要性や学校本来の機能を再確認したのではないでしょうか。

さて、コロナウイルス感染拡大防止のために休校となっていた学校も少しずつ再開していきますが、楽観視することはまったくできず、第二波や感染しやすいと言われる秋冬の時期に再び休校になる恐れがあることを考えると、授業のスタイルそのものが見直しを求められていくようです。

今回は現在の状況を踏まえ、今後予想される授業を「学校で行う授業」と「家庭で行う授業」との二つに分けて、そのポイントや注意点について考えてみたいと思います。


  学校で行う授業  

  従来型だが内容は精選

休校明け当初は、30分、あるいは40分授業といった短縮授業になります。そして分散登校や曜日や時間帯の指定などで、生徒の受ける授業の科目は平等にはならない。かと言って「講師の先生の曜日での契約」上、曜日ごとの交換は不可能。そういった制約も保護者やメディアは知らない。(ここは副校長や教務の先生のコントロールにもよるとは思いますが。)

学校行事で、三密や感染しやすい環境下にあるものについては実施はしばらく困難。それゆえ、その分、平常授業に変更して休校中に潰れた授業時間数を取り戻す方向に。受験を重視している進学校ほどその方向が強くなる。(ご存知のように学校行事、生徒会・委員会活動、部活動も、非常に大切な教育活動の要素なんですけどね。特に小中学校などは。)

休校が長期に渡った今年度に限っては、授業計画そのものの見直しするしかないが、内容も精選していくことを求められる。またいつ休校になるかわからず、ひとつの単元を長時間にわたり細かく積み上げ続けていく、従来の「学校ならではの授業」といった内容がやりづらくなる。生徒とのやり取りも含めた、いい意味でゆったりとした授業が不可能になる。慌ただしく授業を進めていくことは不可避。

  テスト・受験対応型の増加

つまり、教育課程と教えるべき内容や単元が決まっているにも関わらず、受験等で出題されやすい問題のテストを解けるようになることが前提となり、その解答にいち早くたどり着く授業ばかりが求められるようになるでしょう。(成績・評価を出すためにはテストは不可欠ですよね。)だからいわば「塾的な」教え方に近付かざるを得ないでしょう。「理解しているのかな?」という雰囲気が教室内にあるのに、振り返らずただひたすらに講義形式で話せばいいわけでもなく、かと言って生徒との質疑応答の時間も必要。問題は山積みです。教科によりいくつか挙げてみます。

「国語」「英語」では、長編の、特に細切れにできない小説など文学的な作品の読解をしていく授業はかなり困難に。作品全体を通して感想や意見を求めるのは長期にわたるため難しい。途中で切ることが可能な評論・論説文、エッセイなどを読解していく傾向が強くなる。

「数学」「理科」はもはや教育課程のすべてを授業で教え切るのは文字通り物理的に不可能。実験も時間的に減ることが求められ、基本事項の説明、確認と問題を解くのは各自それぞれ自宅で。それを前提にして応用問題、発展問題も生徒が各自で。同様の質問やつまづきが予想されるので、そこのみ説明していくスタイルに。割り切りが必要ですね。


  家庭で行う授業  

  自学自習系の課題学習

学校が再開したとは言え、生徒本人ばかりかその家族が感染していればその生徒は出席停止を求められ通学できなくなります。また再び緊急事態宣言が出てしまうとまた休校に。濃厚接触による感染の恐れを避けるためにも今後より重要視されるのが「家庭学習」です。しかし、その「家庭学習」も従来の宿題形式や予習のためとは異なる自学自習系が増えていきます。今後はそれが次のオンライン授業の前提になるばかりか、その後に小テストなどアウトプットの問題形式へのチャレンジするために個々が取り組むものになります。

  インターネットを用いた授業

濃厚接触せずに講義形式で受講できるという意味では、YouTubeなど動画を撮り編集してURL登録した生徒にオンラインで授業を行うことも必須のスタイルになります。学校教育でも活用すべきツールだと思います。ご存知のように現在大学の授業はほぼこのスタイルで実施されています。ZoomMeetなどのアプリなどを用いてリモートで教員が指示して生徒がうまくできていない部分をやり取りしたりできます。インターネットを前提とした21世紀ならではの授業です。しかし、現在ではその環境整備を含めまだまだ課題があります。次にデメリット面を取り上げます。


  オンライン授業のデメリットも  

メディアでは休校時の学習面の不安から、オンラインによることをしきりに評価しています。当然メリットはあります。しかしながら、全面的に導入できないことも確かにある。そのことを「私立と公立の学校間格差」とわかりやすい図式におさめているようですが、本当でしょうか?  冷静にオンライン授業の困難な面も頭に入れておきましょう。

1)生徒側の環境面

オンラインでの授業を受ける環境面の違いは、ある意味「私立と公立の学校間格差」ではなく一部で囁かれているように「家庭間格差」であることは明らかです。例を挙げていきましょう。

  Wi-Fi環境は?

→  そもそもインターネットを用いてオンライン授業を利用できる環境にある家庭なのか。

  契約ギガ数の制限・上限の有無は?

→  電話会社との契約制限を超えると一気に重くなり授業どころではなくなる。

  タブレットやパソコンを子どものスマホで代用しようとしていないか?

→  スマホでは画面が小さく眼に負担が大きい。またzoomなどのリモートワーク・遠隔操作による授業や習いごとでは学びづらい。

  タブレットやパソコンはその家庭に複数あり、子ども一人につき1台あるか?

→  オンライン授業の時間帯が重なるとパソコンを共有している場合、子どもの誰かが使用できず我慢を強いられる。

  兄弟姉妹がいる場合、オンラインでインターネットを使って同時に学べる複数の部屋が有るか?  部屋によってインターネットが繋がりにくいところはないか?

→  時間帯によってはオンライン授業の実施が重なることも大いに考えられるが、お互いの教員の声が邪魔しあい本人が集中できない。なおかつインターネットが繋がりにくい部屋だとストレスが溜まってしまう。

2)指導者の質

一部の予備校や塾のようにオンライン授業に向いている先生もいれば、生徒とのやり取りから考えさせていくことで惹きつける先生もいる。オンラインの得意不得意は当然ある。

→  生徒の顔を見ることができないので、授業を進める上でのスピードやペースは一方的になってしまうが、生徒側が慣れるしかない。ZoomMeetなどのアプリのようにリモートワーク系の授業を扱えるようになるにはある程度の経験が必要。撮影する教員、指示する教員など複数教員が必要になる。編集に膨大な時間が掛かる。声も聴き取りやすく滑舌良くわかりやすい話し方が教員に求められる。これらは音声や映像授業に付いてくる課題でもあります。

3)教科・科目の性格

数学などオンラインでやりやすい科目もあれば、体育、芸術、家庭科などの実技教科や、国語や英語など本文を読んでいることが前提となりいきなり解説型では学習が成り立たない科目もある。

→  リモートワークのように指示をしながら生徒とやり取りをする形態のものであっても、同時に話をすると誰が話していたのか確認も難しく、誰かが長く話し続けると他の生徒は意見を示しづらくなる。また複数の教員や指導者でひとつの授業をやらないと画面に映っている生徒の対応を見逃しやすい。

→  チャット形式ではとりあえず他の生徒の意見を聞いてそのまま自分もその意見を真似して回答を済ます大学生も少なくないとのこと。つまり長時間かけないとさまざまな意見は出にくく、また深く考えていくのは難しく間が持たないし、取り組む意識が高くなくても「やりました感」が出やすいので注意が必要です。


  終わりに  

今回のコロナ禍は、社会状況が変わる(悪化する)と今までの災害時のように放課後や定期考査後に補習で授業時間を設けて単元や範囲を終える、などという作業自体が困難になります。長期休業中の講習のように、テーマや単元、範囲や取り組ませる内容自体を、こちらで大きく割り切って、かつ効率的にポイントだけ押さえて授業をする。そしてテストのようにアウトプットさせるステップを積み重ねていかせる形式のものが行いやすくなります。その限られた中でのやり方がこれからの授業スタイルになっていくと思います。

そして、我々もサービス業ではないので、今までと同じ内容やレベルを教えるために勤務時間をさらに超過してまで対応する必要は無いです。先生方にも生活があり、健康状態を良好にしておくことが求められるわけですから。(ひとり発症してしまうと、その学校全体が休校になると言われていますよね。)うまく折り合いをつけることが大事です。

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「校内夏期講習はこうやる!」


長期休業を前にすると、学校の先生は周囲から「先生も休みでいいよなー」などと、事情を知らない人たちから言われてしまうものですが、ご存知のように先生は長期休業中も勤務日です。部活指導や一部の承認された研修を除いて通常勤務となるものの、学期中のような授業は無い。しかし我々現場の教員に求められるのは「講習」や「補習」です。近年では主要5教科の先生には当たり前のようにお願いされる講習。私立学校ではまず必須。期間も決まっているとのこと。公立でも中学校、高校問わず、先生にも一部あるいはすべての生徒に課せられているところが少なくないようです。また今年はコロナ禍により学校現場は休校による家庭学習が長引きました。それにより夏休みや冬休みといった長期休業も例年より短縮されることが予想されています。中学校や高校では講習や補習か授業の代替のようにお願いされるかもしれませんね。

今回は一番多く実施されている「校内での夏期講習」に絞ってアドバイスしたいと思います。


  教員側の目的  

生徒の求めているもの、内容は各科目の得意・不得意によって変わります。が、基本的にどのレベルでもインプットとアウトプットで短期間でその分野・項目を学習し直し、「わかった感」「やった感」になるようにすること。理解していることの確認とテストでも「できた感」を持たせる。高校での日本史・世界史などは授業だけでは全てを網羅できないため現代史や文化史など終わらない部分のいわゆる先取りをすることも多くなるので無理しない範囲で講義形式になりますが、生徒が「やった感」を感じるためにもアウトプットの小テストはしておきたいものです。実感した後にさらにその先まで勉強してみようかな、と意識喚起までできれば大成功でしょう。


  保護者の思い  

保護者が校内夏期講習に求めているものは、交通費の掛からない学校で、顔馴染みの先生から、講習料も掛からず無料で指導を受けられること。家で一人で自分のペースでダラダラやるより一斉授業の形式で学習して欲しいから。

学校の管理職の立場としては、うちの学校は面倒見良く「やってます感」をアピールしておきたいはず。科目や講座数が多ければ多いほど充実させてます、という評価に繋がりますから。

つまり、保護者も管理職も夏期講習でどれくらい学習したことが定着してその後伸びたのか、などは検証しません。あくまでもその時やり切ることが大切です。


  期間  

長期にならない方が良い。コロナ禍の今年は特にそうすべきでしょう。ベストは、実は2〜3日間、1週間コースでも前期と後期でやる分野を変えるべき。夏期講習の実施される夏休み。生徒は、部活や帰省や家庭の事情、または通ってる塾との兼ね合いでスケジュールを決めます。長い決められた全日程を終了するまで意味や成果が無いなんていう講座は、生徒は取りにくくなるだけ。先生の思いとは別に、「効率」だけはよく考えてますよ、生徒や保護者は。短い日程こそ魅力。「集中講座」と銘打てばいいだけ。欠席せざるを得ない生徒にはプリント(テストであればもちろん解答付きのもの)を配布してあげるなど気遣いもしておきましょう。大切なのはもちろん、その科目の単元や分野の「理解と定着」ではありますが高望みし過ぎないことが大切。


  講座内容のレベル  

学習理解度や成績によるレベル分けですが、1)基礎基本、2)標準、3)発展、と3パターンを。基礎基本は教科書の例題レベル、標準は問題1レベル、発展は応用問題レベルです。受験対策や入試問題の過去問なども散りばめて。

また、科目担当の先生の都合で展開が難しくても少なくとも、1)基本、2)応用、の2パターンを準備して開講しましょう。ここにおける基本は例題レベル+問題1レベルです。いわゆる授業の復習です。おそらく生徒のほとんどは基礎編を選択するはずです。なぜなら生徒が年度当初に「予習・復習」を欠かさない!なんていう目標を立てていても、学校生活ぎ始まってしまうと、予習はまだしも忙しくて復習はできないからです。


  実施日程等の工夫  

そして、希望生徒の人数が多ければ、そこは同じ講義内容を、午前午後を分けて実施したり日程をずらして行うとより良いです。同じ教科の先生とレベル別に講座を振り分けることができれば、講義内容は「再放送」で行えるので、講習の当該範囲の予習や準備も回数が減り、同じ教科の担当教員同士の負担軽減にもなりますね。生徒の方も他教科の希望講座と重なった時にも希望しやすくなります。


  講座内容の形式  

時間は2時間くくりで。2コマを連続して行う。

A…1)講義、2)演習・確認のための小テスト

あるいは

B…1)テスト、2)解答・解説

Aは、学習した内容を復習するための講座で。

Bは、応用・発展。上級者向けの受験を意識した講座で。いずれもアウトプットに当たる「テスト」で成果を求める。現代においては受験を見据えて学習に取り組むのが勉強、ということになっています。本来の「勉強」論は異なるのは重々承知の上で言います。生徒や保護者、学校の管理職は、その分野の成り立ちや時間を掛けて考えてその本質について理解することこそ「学び」だ!とは思ってません。極端な言い方をすると、残念ながら「わかるようになる、授業についていける」「テストで得点できる、点数が上がる」そこだけを求めています。だから、短時間の小テストに近い形で構いませんが「何点以上は合格!」「何点以下はまた復習を!」と言ったことも生徒に示せるよう準備しておきます。


  終わりに  

いずれにせよ、夏休みに短期で行う夏期講習。爆発的な飛躍よりも、意識付け、習慣付けが大切。成績がマズイな、と思っても、生徒は長い休みを与えられれば「まだ大丈夫でしょ」と問題や課題を先送りします。そこで、しっかりと講座のレベルに応じて必要なものを教員側からインフォメーションする。また、先生方も、授業のように生徒から授業評価やアンケートもされることはなく、夏期講習は実施さえすれば、内容や習熟度、達成度などは誰からも求められません。受講していた生徒と新学期に授業で話した時に「これ、夏期講習でやったよね」と触れて話せる関係性と、それを作る時間こそが大切なのです。だから講習では内容を欲張らずにポイントを押さえて準備し、分野や範囲を告知して、実施するべきでしょう。

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