2020年10月

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「コロナ社会における生徒対応上の注意点」その3


今回のテーマも前回に引き続き、コロナウイルスとの共存をせざるを得ない状況下で児童生徒や保護者に対応についてです。「その2」ではコロナにより出席停止となり学校に来ることができない生徒の定義について示しましたが、今回「その3」では出席停止時とその後の対応上の注意などを示していきたいと思います。


★   出席停止の児童生徒への対応 

前回「その2」取り上げたようにで出席停止になる事例は、陽性か濃厚接触者かだけではなく、風邪なのか他の要素で発熱しているのか、陰性だけど偽陽性なのか、はたまた学校を休みたいがために体調不良を申し出ているのか、疑いだしたらキリがなく本人が休みたければいくらでも休めるようになる。それではみんな来なくなるのでは?とも学校再開当初は思われました。しかし杞憂に終わりました。現在のところ受験期で学校に行かずに籠もって受験科目の勉強だけしていたい一部生徒を除いて、あまりそのような生徒は見受けられません。やはり春先から休校期間があまりにも長かったこともあり、子どもたちは学校を居場所として求めています。学校に来たがっています。

だから、逆に本人が登校したくても前回示した出席停止対象者となり、学校で授業を受けたくても出席停止つまり登校禁止になってしまうと勉強の遅れなどを気にしたり、友人との話題について行けず不安になるなど、いろいろな問題が出てきます。


   出席停止生徒本人への対応

1)発覚当初

まず当該生徒が帰宅が求められしばらく出席停止で学校に登校することが無理になった時点で、教科書や荷物はすべて学校から持ち帰るよう先生は指示します。また学習面ですが、学校での対面授業を受けられなくなっている生徒のためだけに個別に動画配信やオンライン授業を行うことは、通常業務以外に教員が行うことになり負担が大きすぎる。現実的には難しい。やはりスタディサプリなど学習サポートのオンラインコンテンツの導入をしているのならそれを自分のペースで進めておくよう指示しておきます。これは教員側で進度を確認できます。それでも飽きてしまうでしょうから中高生であれば定期考査のテスト勉強、長期休業中の課題となっている取り組みを先取りして行うよう指示しておけばいいでしょう。新たに課題を印刷して渡す時間はないはずです。

2)出席停止の期間中

そして帰宅後は基本毎日定期的に電話連絡をして、本人の体調面に加え精神面なども生徒本人だけでなく保護者ともやり取りをします。電話は二日に一度でもいいでしょう。学習内容や本人が気になっていることも聴いておきます。そのやり取りをした日時や内容も簡単に管理職への報告をしておきます。私は自分のクラスの当該生徒には、学年やクラスへのお便りや連絡事項はその日のうちにこまめに連絡しました。また家庭での「自分の時間割」を作るように指示しました。

3)事後の対応

自主的な勉強はたとえしっかり取り組んだとしても達成感は少ないものです。またオンライン授業には明らかに問題点があります。当たり前のことですが教員と生徒とのやり取りは時間を掛けて質疑応答することは限られ、学習コンテンツの利用では学習態度は極めて受動的になってしまいます。特に今年は休校期間が長引いて、自分で集中して学習に継続して取り組める地頭の良い子と、自分一人では集中力の継続が困難で先生に指導されながらそこで初めて学習内容を習得できる子との学力差は大きく広がっているはずです。登校できるようになったら放課後あるいは朝に質問を受けてあげましょう。時間に余裕があれば、アウトプットで確認できるように小テストをしてあげる。その時間がなければ小テストを宿題にしてやらせてもいいでしょう。こちらの対応は管理職や保護者向けとしても印象は悪くないと思います。本人がやるやらないは、できるできないより大切。定着度を測るのではなくまず取り組む。その方向性で。


   この時期のクラスへの対応

どこの学校も行事も見直され精選され、というより大幅に削減され、学校全体での行事が無くなるか学年単位で規模も縮小されたものになってしまっていますよね。それゆえに今年度は(あるいは来年度以降も)クラスの生徒の人間関係はさらに希薄で、従来より結び付きが強くなる可能性は少ない。担任の先生や顧問の先生がひと工夫しないとクラス経営は難しいですね。オンラインではコミュニケーション能力、遂行力、持続力、忍耐力、体力、自制心など非認知能力を向上させることは困難だという実験結果も出ています。ホームルームなどでは先生から焦っていろいろな話を一方的にするのではなく、レクリエーション的な要素を入れた児童生徒の活動を行っていきましょう。

我々が現場でできることは「生徒個別」の指導でケアしつつ「小集団」いわゆる学年ごとやクラスごと、部活ごとが基本になっていくはずです。そしてその包括的なものとしての「学校全体」の指導となっていくという流れはおそらくこのコロナ禍が続いている状況下ではしばらく変わらないはずです。

先生から伝えるべき内容は、熱量を持って繰り返して。しつこいくらい頻度で子どもたちみんなに声掛けをする。クラスの雰囲気が良くなって、子どもたち個々の役割が決まりだしたらお互いに関わり合うように仕向ける。こういったことは繊細な生徒とその保護者向けなら、さらに回数を増やしていくべきです。


(終わりに)

このような未曾有の状況下において、我々教員自身も非常に不安定な心理状態で対応を求められ、また自身の体調管理も今まで以上に怠りなくすることが求められます。なおかつ業務内容も学習面での指導すべき内容をスピードアップして押し進め、慣れない感染予防の対策続きで、本当に毎日疲弊しています。だから、まず我々教員も休める時は無理せず休まねばいけません。我々が体調も精神的にも安定して、子どもたちを受け止められないといけませんしね。今、子どもたちは前向きに学校に登校してきます。我々はそんな中で最低限どのようなことに配慮して先生として取り組むべきか常に考え、しかし一人きりにならず相談して、互いに知恵を出し合い、今このコロナ禍の中で可能なことをしっかりやる。くれぐれもお互いが負担にならない程度に。この精神で良いのではないでしょうか。子どもたちも保護者も、その姿を見てくれているはずです。


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「コロナ社会における生徒対応上の注意点」その2


今回のテーマは前回に引き続き、コロナウイルスとの共存をせざるを得ない状況下で児童生徒や保護者に対応をする際の注意点やポイントについてです。まず、コロナ感染生徒やコロナ感染が疑われて、出席停止となり学校に来ることができない生徒の定義について、その後に対応上の諸注意などを示していきたいと思います。


★   出席停止の取り扱い 

    児童生徒本人が感染者

こちらはコロナに感染しているかどうかの検査、PCR検査、抗原検査、抗体検査などで陽性が認められた者。自宅以外の場所で隔離か入院、最近では陽性反応の出た人数が多いことから自宅で隔離され待機の措置が取られます。

   児童生徒が感染者の濃厚接触者

1)家族が感染者

こちらは当然生活を共にしている家族に陽性反応が出た場合は濃厚接触者となります。

2)友だちが感染者

学校の同じクラス、同じ部活動、校外だと同じお稽古ごと習いごとの児童生徒に感染者が出た場合は濃厚接触者に。特に距離も近い座席や行動を共にするなど仲の良さも確認されます。

3)先生が感染者

それのみでなく、現在では学校で授業を受け持っている先生やコーチ・指導者などに陽性反応が出た場合も状況によっては濃厚接触者となります。

いずれも、対象者の範囲が狭すぎると感染拡大の怖れが当然有りますが、対象者の範囲を広げすぎると保健所はその責任から申し出のあったすべての対象者に隔離の指示(主に自宅待機、学校への登校と外出禁止)をして、検査を受けて結果が出て、たとえ陰性であっても短くない期間、登校禁止となります。都立高校では陽性者の濃厚接触者として認定されてから二週間は出席停止扱い、かつ本人の体調によりその期間が長引くこともあります。

   児童生徒本人の体調不良

1)風邪および発熱

私の勤務している学校では、本人の微熱や体調不良はほぼ出席停止扱いにしています。明らかな怪我の治療等を除き欠席にはしていません。風邪、発熱はもちろん体調不良、頭痛もすべて出席停止の扱い。風邪であれば学校においては今までは欠席でしたね。(……こちらもうつるものですけどね。)  児童・生徒に「風邪および発熱の症状」がある場合は現在は「欠席ではなく、すべて出席停止」に。従来もインフルエンザやノロウイルスなど感染症の生徒には適用されていたものが、今回は「コロナ感染者の恐れがある」あるいは「疑いもある」だけで出席停止に。つまり欠席日数には含まれず、調査書や指導要録等に記載されることになります。疑わしきはすべて出席停止になりました。

2)コロナ感染者の特徴にあたる症状

また数値でわかりやすい高熱などではなく、味覚障害などコロナウイルス感染の際の特徴的な自覚症状もその対象となります。鼻が詰まっている。倦怠感など複数の特徴的な症状がありますが、そのいずれかに該当して申し出れば、学校ではまず出席停止の対象者として認められます。

  保護者が休ませたい場合

生徒本人や家族にはまだ症状が出ていないが、感染が蔓延している地域ではこれも休ませたいと申し出た児童生徒は出席停止の対象者となることが多いようです。「え? それだけで?」「本当に?」と思いますよね。こちらはあくまでも校長判断になるのですが、先述のガイドラインに「保護者から感染が不安で休ませたいと相談のあった児童生徒等」に関しては「感染経路の分からない患者が急激に増えている地域であるなど感染の可能性が高まっていると保護者が考えるに合理的な理由があると校長が判断する場合」には指導要録上「出席停止」として記録することも可能であると規定されているのです。

コロナの検査の普及率は向上しているもののまだ我が国では保健所や病院で気軽に検査をできるレベルではなく、感染の拡大防止の観点からこの扱いはしばらく続いていくと思われます。


生徒への対応上の具体的なポイントについては、また次回に。

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「コロナ共存社会における生徒対応上の注意点」その1


今回のテーマは「コロナウイルス共存社会における児童生徒への対応上の注意点」です。現在、コロナ禍により我が国の社会もいまだ制約の多い日常生活を継続しています。学校現場でもコロナ感染拡大により、従来の学校教育とはまったく異なる対応を求められています。今回は3回に分けてそのような状況下における生徒対応の注意点や抑えておきたいポイントについて助言していきます。

第1回となる今回は「学校現場での現状」と学校を管理管轄している「文部科学省と教育委員会の方針」を確認します。


★   学校現場での現状 

    ホームルーム、授業

コロナ感染拡大防止の観点から、当初に比べれば制約は多少緩やかになったものの、三密を避けるための時差登校の継続、対面授業に戻っても先生も生徒もマスク着用、声はお互いによく聴き取れない。表情もわからない。音楽の授業も合唱など歌うことはまだ許可されず。窓の開放やサーキュレーターの稼動は日常。生徒自身も予防や対策をしています。学校も時差登校、登校前の家庭での検温要請、生徒昇降口でのサーモグラフィーでの登校時検温、マスク着用での登校義務化、担任の先生による毎朝の生徒個々人の健康調査票のチェック、休み時間ごとの手洗いや手指の消毒指導、マスクの常時着用により喉が乾くため授業中の水分補給OK、給食時や昼食時に飛沫が飛ばないようマナーの徹底指導、使用した教室の机椅子の消毒と清掃指導など、非常に細かな対策をしています。しかし、これだけ行っていても完璧な予防は不可能に近い。子どもたちはいろいろな生活環境や交通手段で通学する人たちの集団の中で活動し、学校内のいろいろなところを触り生活せざるを得ない。感染してしまう時はどう予防していてもしてしまいます。もちろんその生徒を責めるようなことは誰ひとりできないでしょう。そして我々も予防の奨励の声掛けを続けていくしかありません。

    学校行事、生徒会・委員会、部活動

文化祭の一部中止、宿泊行事の中止など行事の縮小は変わらず。運動会、体育祭も学年別で種目を絞って実施というところが少なくないようです。委員会は仕事内容を一部削減、生徒総会や生徒会選挙などの他、始業式や入学式など式典も放送やオンライン映像で。おそらく教職員の皆さんの学校でも授業公開や保護者会そして学校説明会なども従来のやり方を大幅に見直していますよね。来校希望者を予約申込み制にして人数を絞るなど縮小する、あるいは映像や動画のオンライン化での対応が主流となりつつあります。部活動においても下校時間を早めるために活動時間の短縮や定期演奏会の中止、対外試合の自校での中止などを継続している学校もまだあるようです。かわいそうですが、完全な予防策がない現状ではすべて従来通りにとはいかない。どこまで子どもたちや保護者の希望とすり合わせるか、従来の内容に寄せられるか、満足感を与えられるか、非常に繊細な問題であり現在の課題だと思います。


★   文科省と教育委員会の方針 

   文部科学省の考え方

2020  年2月末に政府の休校要請を受けて多くの学校が休校に。この判断基準になったのは「学校保健安全法」20条でいう「臨時の休業」でしたが、感染拡大が一段落したと判断された6月に文部科学省から「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」と「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜学校の新しい生活様式〜」が発表されました。学校はこのガイドラインに基づいて休校明け、登校再開後の学校運営を行うことになりました。文科省と教育委員会の考えとしてはできるだけ休校はしたくないようです。オンライン授業であっても授業時数を確保したいようです。いくつかの学校から報告を耳にしていますが、生徒の数名がコロナ感染の検査結果が陽性と判断されたり、濃厚接触者として多数の生徒がその検査の対象となり、出席停止扱いで自宅待機を指示されても新たに学校の一部(当該学年)または全部を休校にすることを非常に嫌がっているようです。家庭から学校再開の強い要望、児童生徒からあがってくる対面授業の無い中での学習の取り組みに対する不安、学校行事、部活動、委員会、クラス行事をできる限りやりたいという声、など理由はたしかに複数あります。しかし文科省や学校管理者の立場ではまず授業日数の確保でしょう。うちの学校はやっている、新しい日常をスタートした、日常をもう取り戻した、ということがまず優先。現時点でも休校期間が長すぎて授業日数も短縮され過ぎたことで指導すべき学習内容を教えきれてない、そのためその後にある入試対策含めさまざまな問題がある。それにもかかわらず、コロナが全面的に収束することが極めて困難な現状であり、また第二波、第三波がくることも予想され認識されているから、まず休校を学校として実施することは避けておきたいのでしょう。

   学校現場に求められているもの

ガイドラインでもその点については、コロナ禍であっても「持続的に児童生徒等の教育を受ける権利を保障していくため、学校における感染およびその拡大のリスクを可能な限り低減した上で、学校運営を継続していく必要がある」という趣旨を明確にしています。しかしながら、それに伴い予想されるトラブルや問題点についての対応については、どこからもガイドラインなるものは出されておらず、校長判断や各校で対応を求められています。つまり現段階では「コロナと共存していくことが既定路線」で、「その際のトラブルの対応はこちら任せ」になっているとも言えます。


第2回では、この現状を踏まえてテーマの本筋である我々教員の「児童生徒への対応のポイント」について示していきます。

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