「コロナ社会における生徒対応上の注意点」その3
今回のテーマも前回に引き続き、コロナウイルスとの共存をせざるを得ない状況下で児童生徒や保護者に対応についてです。「その2」ではコロナにより出席停止となり学校に来ることができない生徒の定義について示しましたが、今回「その3」では出席停止時とその後の対応上の注意などを示していきたいと思います。
★ 出席停止の児童生徒への対応 ★
前回「その2」取り上げたようにで出席停止になる事例は、陽性か濃厚接触者かだけではなく、風邪なのか他の要素で発熱しているのか、陰性だけど偽陽性なのか、はたまた学校を休みたいがために体調不良を申し出ているのか、疑いだしたらキリがなく本人が休みたければいくらでも休めるようになる。それではみんな来なくなるのでは?とも学校再開当初は思われました。しかし杞憂に終わりました。現在のところ受験期で学校に行かずに籠もって受験科目の勉強だけしていたい一部生徒を除いて、あまりそのような生徒は見受けられません。やはり春先から休校期間があまりにも長かったこともあり、子どもたちは学校を居場所として求めています。学校に来たがっています。
だから、逆に本人が登校したくても前回示した出席停止対象者となり、学校で授業を受けたくても出席停止つまり登校禁止になってしまうと勉強の遅れなどを気にしたり、友人との話題について行けず不安になるなど、いろいろな問題が出てきます。
① 出席停止生徒本人への対応
1)発覚当初
まず当該生徒が帰宅が求められしばらく出席停止で学校に登校することが無理になった時点で、教科書や荷物はすべて学校から持ち帰るよう先生は指示します。また学習面ですが、学校での対面授業を受けられなくなっている生徒のためだけに個別に動画配信やオンライン授業を行うことは、通常業務以外に教員が行うことになり負担が大きすぎる。現実的には難しい。やはりスタディサプリなど学習サポートのオンラインコンテンツの導入をしているのならそれを自分のペースで進めておくよう指示しておきます。これは教員側で進度を確認できます。それでも飽きてしまうでしょうから中高生であれば定期考査のテスト勉強、長期休業中の課題となっている取り組みを先取りして行うよう指示しておけばいいでしょう。新たに課題を印刷して渡す時間はないはずです。
2)出席停止の期間中
そして帰宅後は基本毎日定期的に電話連絡をして、本人の体調面に加え精神面なども生徒本人だけでなく保護者ともやり取りをします。電話は二日に一度でもいいでしょう。学習内容や本人が気になっていることも聴いておきます。そのやり取りをした日時や内容も簡単に管理職への報告をしておきます。私は自分のクラスの当該生徒には、学年やクラスへのお便りや連絡事項はその日のうちにこまめに連絡しました。また家庭での「自分の時間割」を作るように指示しました。
3)事後の対応
自主的な勉強はたとえしっかり取り組んだとしても達成感は少ないものです。またオンライン授業には明らかに問題点があります。当たり前のことですが教員と生徒とのやり取りは時間を掛けて質疑応答することは限られ、学習コンテンツの利用では学習態度は極めて受動的になってしまいます。特に今年は休校期間が長引いて、自分で集中して学習に継続して取り組める地頭の良い子と、自分一人では集中力の継続が困難で先生に指導されながらそこで初めて学習内容を習得できる子との学力差は大きく広がっているはずです。登校できるようになったら放課後あるいは朝に質問を受けてあげましょう。時間に余裕があれば、アウトプットで確認できるように小テストをしてあげる。その時間がなければ小テストを宿題にしてやらせてもいいでしょう。こちらの対応は管理職や保護者向けとしても印象は悪くないと思います。本人がやるやらないは、できるできないより大切。定着度を測るのではなくまず取り組む。その方向性で。
② この時期のクラスへの対応
どこの学校も行事も見直され精選され、というより大幅に削減され、学校全体での行事が無くなるか学年単位で規模も縮小されたものになってしまっていますよね。それゆえに今年度は(あるいは来年度以降も)クラスの生徒の人間関係はさらに希薄で、従来より結び付きが強くなる可能性は少ない。担任の先生や顧問の先生がひと工夫しないとクラス経営は難しいですね。オンラインではコミュニケーション能力、遂行力、持続力、忍耐力、体力、自制心など非認知能力を向上させることは困難だという実験結果も出ています。ホームルームなどでは先生から焦っていろいろな話を一方的にするのではなく、レクリエーション的な要素を入れた児童生徒の活動を行っていきましょう。
我々が現場でできることは「生徒個別」の指導でケアしつつ「小集団」いわゆる学年ごとやクラスごと、部活ごとが基本になっていくはずです。そしてその包括的なものとしての「学校全体」の指導となっていくという流れはおそらくこのコロナ禍が続いている状況下ではしばらく変わらないはずです。
先生から伝えるべき内容は、熱量を持って繰り返して。しつこいくらい頻度で子どもたちみんなに声掛けをする。クラスの雰囲気が良くなって、子どもたち個々の役割が決まりだしたらお互いに関わり合うように仕向ける。こういったことは繊細な生徒とその保護者向けなら、さらに回数を増やしていくべきです。
(終わりに)
このような未曾有の状況下において、我々教員自身も非常に不安定な心理状態で対応を求められ、また自身の体調管理も今まで以上に怠りなくすることが求められます。なおかつ業務内容も学習面での指導すべき内容をスピードアップして押し進め、慣れない感染予防の対策続きで、本当に毎日疲弊しています。だから、まず我々教員も休める時は無理せず休まねばいけません。我々が体調も精神的にも安定して、子どもたちを受け止められないといけませんしね。今、子どもたちは前向きに学校に登校してきます。我々はそんな中で最低限どのようなことに配慮して先生として取り組むべきか常に考え、しかし一人きりにならず相談して、互いに知恵を出し合い、今このコロナ禍の中で可能なことをしっかりやる。くれぐれもお互いが負担にならない程度に。この精神で良いのではないでしょうか。子どもたちも保護者も、その姿を見てくれているはずです。