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「生徒の救急搬送時にやるべきこと」



今回は、授業など学校生活はもちろん登下校中、主に体育の授業や部活動の時に熱中症や大きな怪我や事故により救急で病院に搬送引率する時の対応についてです。最近では食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの発生するリスクにも対応を求められます。ということは、小中学校においては給食時などでもこういう状況が想定されますよね。

こういう状況が起こっても、焦ってパニックに陥るのでなく、また逆にただただ他の先生待ちになり対応を委ねるのでなく、若手であっても先生として抜かりなく生徒はもちろん関係者に対応しておきたいところです。


順を追って対応の手順を助言していきます。しっかりと覚えておいてください。



    養護教諭への連絡 


まず最初に報告するべきなのは養護教諭の先生です。校内であれば保健室の先生がいるところであれば、まずは初期対応と共にそちらに。動かすことが可能であれば保健室や医務室へ。本人の痛みが酷かったり頭部への衝撃などで動かすことができない時は、その場で対応する他はありませんが。その後の対応も一緒に対応や指示を仰ぎたいところ。しかし、土日祝日は当然不在でしょう。それでも慌てずに。



    救急車の要請 


次に消防署あるいは病院へ連絡 です。緊急性を要するものは、周囲の教員と確認し、近くにいない場合は生徒に呼びに行かせて、すぐに119番に連絡を。その際、くれぐれも当該生徒から離れない。責任問題に繋がるリスクはおかさない。救急隊が繁忙期で時間がかかる場合もあるのですぐに消防署と要する時間を確認して、顧問や保護者の自家用車、無ければタクシーを呼んででも救急対応のある病院へ連れて行く対応も。



    保護者連絡 


保護者へも当然連絡します。生徒は未成年。保護者連絡は必須。できれば複数の先生が動ければ同時に状況報告だけでも一本入れておきたい。

現場にいる授業の担当者や顧問の先生は、命に関わる、あるいは障害の残る恐れがあるときはすぐに連絡を。保護者の職場でも可。連絡は履歴を残して。そこまでではない程度であれば、病院や保健室などで対応してその後に連絡を。意識があるのであれば本人のスマホからで。ただし必ず先生本人が保護者と話をする。通話した上で本人と途中で変わっても良い。その方が病院引率であれば受診して得た正式診断名、全治にどれくらい日数や費用がかかるか、なども伝えられます。


LINEのメッセージやメールで済ますのは感心しませんね。控えましょう。文字だけの連絡は、誤解を招くことも少なくない。直接話しておくことが大切です。学校管理下にある時にも関わらずこのような事態になってしまい申し訳ありませんという気持ちを、しっかり込めて「先生自身の声で」伝えましょう。


また学校の保険「日本スポーツ振興センター災害共済給付制度」では後日かかった費用が返金されることなども伝えておきましょう。



    管理職連絡 


そこまでの連絡をすべて完了して、要点をまとめたら管理職へ報告します。手間にはなりますが、報告時に、生徒のクラス番号、氏名、事故日時や場所、当時の対応、保護者連絡の時刻、疾病名や病院名、といった諸々のポイントをまとめたものを作成し、プリントして渡せば管理職サイドも記録を残しておく義務があるので助かることでしょう。

一段落してしまうと、この報告をついつい忘れがちですが、必ず忘れずに。そのためにも校長までは必要無いですが、副校長あるいは教頭先生の連絡先・携帯番号はスマホの電話帳に入れておきましょう。これは教員としての義務に当たりますので。後で「報告義務違反」ましてや「隠蔽した」などと言われないように。



    担任連絡ほか 


最後に担任へ報告します。これは多少遅れてもかまいませんが忘れずに。病状や怪我の状態、受診や入院した病院名、今後学校にふつうに出席できるか否か、今後の授業に通常の状態でさんかできるかどうか、体育の実技についての可否なども伝えておきます。例えば松葉杖が必要でしばらく体育系学校行事に支障が出る、校内学習・遠足や修学旅行で特別な対応が必要となる、などについても本人に確認しておきます。


なお、リハビリが必要となったり、復帰まで長引くような大きな怪我であれば、保健体育科の先生にも直接連絡しておきましょう。



(終わりに)


我々の働く教育現場では、多数のさまざまな体質や健康状態の子どもたちと常に時間を共にします。その時間が長いためつい先生方の意識は薄れがちですが、毎日「命を預かっている」と言えます。それは決して大げさな言い方ではありません。我々がその場にいない時でも、例えば登下校中などにおいても事故や緊急の連絡電話は保護者ばかりか学校に連絡が来るからです。

経験が長い先生、あるいは引退、退職された先生方ほど、その部分は一番実感するはずです。昔から先生たち自身がよく聞き、よく話してきた言葉がありますね。始業式や終業式、あるいは行事の時に、子どもたちに向かって「あなたたちみんなが揃って元気な顔を見せてくれて嬉しい」あるいは「見せて下さいね」という言葉は、先生方の何よりもの本心だからです。


だから先生自身に非があろうがなかろうが、必要なことはまず事故発生時の適切な対応とその後の細かな生徒・保護者へのケア。そして適切なタイミングでの関係各所への連絡です。隠すことなく誠実に対応することで、保護者や周囲のあなたへの評価も決まります。くれぐれも冷静に。そして抜かりなく。事故時とその後の対応で、逆に教員としての評価は高まることも。

子どもたちが頼るのは、保護者の方々が頼りにして任せてお願いするのは学校の先生方。つまり、事故が起こってもそれにしっかり対応できるのが「先生」。ネガティヴになり過ぎず、冷静に先生としての対応をやり切りましょう。