IMG_4076

「部活動の年度まとめと新年度に向けての引き継ぎ」



さて、3月の年度末を前にして、この時期の学校は受験、進路決定、そして卒業を迎える時期となり、現在の部活の生徒との今後の展開を見据えながら、新年度に備えて新入生を迎える準備をする時期になります。慌ただしい4月には、目の前の業務に追われ、部活関係は生徒に任せて取ってつけたような対応に終始してしまう顧問の先生も少なくないはず。3月には現在の顧問の先生の異動や退職に伴い、主顧問の交代など様々な引き継ぎもありますね。


さて、今のうちにやるべきことを整理しておきましょう。今回は「部活の総括と引き継ぎ」です。その準備と具体的事項についてアドバイスしていきます。


  今年一年の総括  


今年度の総括には、その内容として学校内のことと学校外の対外的なこと、両方に関わることがあります。先生ご自身が当該部活の主顧問でもサブ的な副顧問でも、引き継ぎをしなければならない側でもされる方の側の方でも、いずれも必要なことを挙げておきます。後回しにすると結局先生ご自身が面倒なことにもなるので、是非チェックしながら確認してください。


  顧問と役割の再確認

このことは校内外の人事にも関係しますので、主顧問であれば校長など管理職に要望をあらかじめ出して、お願いすることもしておきます。

「名前だけ顧問」の先生を存在させずに、少しでも役割を担ってもらうのがいい。それはたとえ専門外の、育児や介護で忙しい先生であっても、です。会計など学校の勤務時間でできることはあるはず。顧問間の人間関係、生徒の関係、その保護者との関係を考えると、卒業アルバムの写真にだけ収まるのはいかがなものでしょうか?  限られた関係性だとしても構築する義務が顧問にはあります。


  会計決算

教科や分掌などと同様ですが、公的に支出された加盟費や大会参加費とは別に、部費などを徴収している場合は、生徒を通してでも保護者宛にプリント配布しておきたいものです。透明性を確保するためにも通帳のコピーや領収書も保管しておきましょう。


  大会結果や実績

練習試合はともかく公式戦などの大会成績は、その時期とともに簡単にでも記録をして残しておきます。学校の広報誌における記事掲載の依頼にも対応する材料になりますし、部のOB会や卒業生向けにもわかりやすい活動実績になります。


  問題点や課題

現在の当該部活の問題点は必ず顧問間で共有しておきます。次年度に向けてこの時期に確認しておくのが大事。特に「指導者の異動や退職」「主顧問や監督の交代」など大きな問題については、管理職にもあらかじめ伝えておきます。


⑤「三送会」の準備

「三送会」つまり「三年生(卒業生)を送る会」のことですね。日程・場所の確保、現役生と卒業生・保護者の方々への連絡、進行と挨拶の担当、会場装飾、余興やアトラクション、ビデオ上映、記念品授与など、流れの確認しておきます。終わり良ければすべてよし、ですね。いったんマニュアルを作って、それを毎年改定していけば生徒も思い出し良いものにしていけると思います。



  新年度に向けて  


1)校内的な事項


  次年度の顧問と役割分担を確認

上記の「今年度の総括」の一つ目にも書きましたが、新メンバーにおける主顧問・副顧問といった顧問の体制だけでなく、会計担当や土日の引率、居残りの曜日などまで決めておきたい。次年度、慌ただしくても4月当初に必ず顔合わせの時間を作りましょう。


  中心生徒(=部長、主将)の把握

いわゆる生徒の責任者と中心となるメンバーを把握しておきます。と同時に、生徒間で問題のあることも耳に入れておく。しかし一方からの情報だけであれば参考程度に。(……生徒からであれ教員からであれ、です。)

生徒に幹部を自分たちで決めさせて、その子どもたちを中心に様々なことを考えて決めさせ、そして実行させる、いわゆる「ボトムアップ型」のスタイルを取り入れていくと、生徒の自主性も芽生え、先生との関係も程よい距離感になり関係も良くなり、大会前も円滑に運ぶようになります。


  活動日の確認

新年度のグラウンドや体育館など学校内の施設、あるいは外部施設に関する使用の曜日や時間帯を確認します。(対外的な事項になりますが、外部施設の場合は予約や許可証、利用時に掛かる費用についても確認しておきます。)また活動時間と最終下校時刻も各部活の生徒および保護者には伝えます。


  年間スケジュールの確認

次年度の1年間の流れの確認と、主要大会(公式戦・定期戦)や定期演奏会など、今年一年の流れを振り返り確認します。3年生引退時期と新チーム立ち上げの時期もおおよその目安になる時期を見通し、顧問間で確認しておきます。

新入生勧誘と入部、当該部活の保護者会でのプリント配布も視野に入れて、学校行事も高体連・中体連の年間行事計画と見合わせて複数で流れを把握しておきます。


  次年度予算と購入物品、大会参加費の確認

大きな変更点もなく例年通りであっても、複数で、かつ具体的に確認しておきます。


以下については、必要がある場合プラスアルファで。


(⑥幹部ミーティングの日時設定の予告)

ここでは先生からの一方的なものにせず、新しい代による目標、チームスローガンや約束事の設定なども行います。


(⑦新入生説明会・歓迎会の日時設定)

当該部活の新入生入学後の説明会や歓迎ライブや発表会の日時・場所の設定もしておきます。

また部活動の「保護者説明会」も年度当初(5月以降でも)実施しておくと、保護者との風通しもよくなってトラブルになりそうな時に解決に向かう率が高まります。



2)対外的な事項


①高体連・中体連の新年度の登録と振込

年間の加盟登録と大会の申込み。予算の執行と振込の手続き。経営企画室や事務室で人事異動があり滞ることがあるとたいへん。すべては現顧問の先生の業務であり責任となります。これを忘れると公式戦に出場することができなくなるので責任重大です。くれぐれも年度当初の忙しい時期の加盟登録や大会参加費の振込先と期日の確認を忘れずに。


②合宿など宿泊行事、関係する事項の確認

時期、場所・施設、予算、予想される生徒の参加人数、引率顧問の確認。引率の先生が今年度から大幅に変更する場合は、業者や宿の方、合同合宿であれば関係する部活の顧問の先生に、連絡し説明します。


③外部指導員、コーチの指導継続のお願い、前顧問と指導費の確認

自校の教員以外に指導者として名前を連ねている方や、支援してくださる方がいる場合、基本的に指導の継続をお願いするのであれば、その指導の曜日や時間帯、それに伴う指導費の金額や出どころ、支払い方法も確認しておきます。



3)校内外に関する事項


こちらについては、人事も不確定なこの時期の段階では「連絡先の引き継ぎ」のみで良いでしょう。


・顧問間の緊急連絡先

・生徒の緊急時の連絡先

・定例的にあるいは頻繁に行う練習試合の相手校の電話番号と顧問の先生の連絡先

・保護者および責任者の連絡先

OB会代表者の連絡先

・高体連や中体連の地区の責任者にあたる先生の連絡先

・管理職の先生の緊急連絡先(生徒の事故・大きな怪我、合宿等宿泊先での食中毒など大きなトラブルに備えて)


以上のようなところを押さえておきます。余裕があるなら、新学期には新体制発足の報告をします。そうしておくと先生ご自身や当該校の部活、チームの印象は良くなります。



(終わりに)


「部活動」はあくまでも学校生活においてはプラスアルファのものです。部活動は、生徒自身が入部して、引退とは別に「辞める=退部する」ことも可能。授業や学校行事それに伴う生徒会や委員会活動については、生徒でいる限り辞めることはできませんから、すべての生徒の活動ではそちらがやはり優先されます。

それでも、昔から今に至るまで、どんな場所のどんな規模の学校においても部活動が存在し、先生が入れ替わっても、生徒会・委員会活動とは別に任意で参加する形態のものであるにもかかわらず現在も存続している。それは、やはり部活動という場に、子どもたちの所属意識やアイデンティティ、有意義な時間が確かにあるからでしょう。その子どものその後の人生にとって大きな経験になっていることも確実にあるはず。


部活顧問の負担の問題があるのは当然承知していますが、外部指導員・部活動指導員の導入促進を取り組もうとしているような段階の現状では、今日の日本ではまだ我々教員が避けることができない問題です。

……その問題については部活動運営のやり方、部員生徒との距離感、顧問間の関係作りなど、あらためてテーマとして取り上げる予定です。)


また「専門の種目の部活指導をやるんだ!」「そのために、その素晴らしさを伝えるために学校の先生になったんだ!」という積極的な先生も少なくないはず。そういう先生は、その熱量とやり甲斐があるのですから、やり方さえ間違えなければ子どもたちにとって大きな存在価値が生じますし、学校にとっても、高体連や中体連の専門部にとっても、価値ある戦力なのです。


良いものは見直しながらも継続して、また時には改革をして、そして将来的にはそれを引き継いでいく。「部活動」に限らず、学校とはそれ自体そういう存在ではないでしょうか。


次回も引き続き部活動関係をテーマにします。新年度の部活動の立ち上げ時の取り組み。部活動の新入生勧誘に関するものをテーマとします。次回は「部活動の宣伝はこうやる!」です。