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「生徒指導・特別指導はこうやる!    その2  〜申し渡し編〜」


今回の「先生学」のテーマは「生徒指導・特別指導はこうやる!」の続編。前回同様、高校における生徒指導のオーソドックスな流れと特別指導について、特に学校現場における指導のポイントを押さえながら助言していきます。第1回の「事実確認編」に引き続き、今回はその第2回「申し渡し編」です。

「申し渡し」と「謹慎」指導に関しては、手順を誤ることなく進める必要があると同時に、生徒対応だけでなく保護者対応についても適切な関わり方と濃密な時間を要求されます。具体的な流れとしては「生徒の問題行動の事実確認」が終わり「特別指導の対象」(あるいはそれに準ずる指導対象)であると、発見し最初に関わった当該教員およびその周囲の複数教員が認めた時点からの内容です。学年(の先生方のみの指導で済ます)レベルや、部活動の顧問(の先生方で済ましてしまえる)レベルではなく、それより強い指導になる時の事例を挙げて話していきます。

今回は、前回の      事情聴取・事実確認  

に引き続き、「臨時会議」の開き方と「申し渡し・保護者呼び出しの対応上のポイント」について示していきます。

今回の内容のポイントは、時間のない中で、いかに「手際よく」「抜け落ちることなく」その後のために準備や報告、会議呼び掛けのための根回しができるか。一つでも用意するものや連絡、手順が抜け落ちてしまうと後手に回り面倒です。確認しておきましょう。


    合同部会の準備  

1)当該生徒の対処

まず、対象生徒は、すべての荷物をもたせて教室から離れた所に隔離しておきます。その生徒のスマホは学年で預かっておく。生徒の時間割からその時間の授業担当の先生には別室で指導している旨を伝えておきます。授業の出欠については、こちら側の指導で拘束しているので「出席扱い」にしてもらうようお願いしておくのが妥当。原則、危険な行動に出ることがないよう危険防止の意味も含めて授業のない先生が張り付きで同室。昼食などは取らせます。トイレも生徒と接することのない場所を使わせます。

2)臨時の合同部会の準備

同時並行で、合同部会の準備をします。

臨時の学年会を開いて当該生徒の問題行動を学校全体の問題として捉え指導に入ることを確認します。「学年で原案を作成」し、それをもとに「生活指導部」の主任および指導部の先生方に報告をする。

報告内容は、問題行動の概略、対象生徒のクラス番号・氏名と、現在の生徒の状況。生徒の状況とは、事実の認否(認めているのか否か)、態度、現在の精神状況など。

用意しておくことは、

①「事実確認をした内容」。これは生徒から聴き取りをした先生が内容をわかりやすくまとめたもの。シンプルで良い。箇条書きなどでも可。

②「反省文」(事実経過を含む)。これは生徒自身が振り返って書いた内容。これをセットにして複数枚、コピーして準備しておく。会議後に不要な分は回収してシュレッダーにかけます。

③合同部会の時間と場所を押さえて、報告と会議開催のお願い。問題行動が午前中の発覚であればその後すぐに「昼休み」に、午後になってからであれば「当日の放課後」に設定する。すぐに会議のメンバーに連絡。対象の教員のメンバーは学年と生活指導部の先生方、他学年の生活指導担当の先生。場所、開始時刻、事件の内容を連絡する。


    臨時の拡大生活指導部会と職員会議  

昼休みや放課後など、その時間の補習、部活動、個別の呼び出し指導、その他の定例の会議など、予定されていた業務よりすべて優先して臨時の合同部会に出席してもらいます。対象の先生方の出欠確認後、すぐに報告に入ります。通常、会議の進行は生活指導部主任です。

1)事実経過

あらかじめ学年から準備して配布された「事実確認」「反省文」をコピーに目を通すようお願いし、当該学年の主任あるいは学年生活指導部の先生から説明します。(「反省文」は時間的に間に合わなければこの時点では不要です。)

そして、学年からは対象となる生徒が今回の問題行動を起こすまでに、「過去」に生活指導、特に特別指導になった回数、その問題行動の内容、その質と日数なども報告します。(学年で事前に確認しておきます。)

問題行動の内容については、いつ、どこで、誰が、誰に、どうしたのか、なぜしたのか。今はどのような状況か。補足することがあればここでします。その後、質疑応答をします。

2)指導原案の提示と了承

今回の件の指導の原案を学年から提示します。生活指導部主任の先生は、過去の同様の事例と当時の指導内容も調べて準備しておき、今回の指導内容が適当なものであれば、それを説明し出席している先生方の了承を得ます。

原案の指導内容が「軽すぎる」あるいは「重すぎる」として適当ではない、と判断される先生が多いのであれば、修正案を提示してすぐに了承を得られるようにします。指導原案の落とし所は、経験のある先生から聴いて参考にしておきたいものです。決定次第、次の「臨時職員会議」に諮ることになります。学年の先生と生活指導部の主任は臨時職員会議開催のため管理職である校長と副校長などに連絡をし、その準備に。事実経過と指導原案を作成します。ホームルーム担任は保護者への連絡の準備に入ります。

また「特別指導」にまでは該当しないと認められた場合は「生活指導部指導」として、学年だけでなく生活指導部の主任から説諭を受ける指導になります。しかし、指導の記録は残しておきます。

3)臨時職員会議

生活指導部主任は学校の教員全員に声かけをして校内放送も使い、校長、副校長を含む全教員に臨時職員会議を開く連絡をします。(この場合、経営企画室など事務職員はメンバーの対象とはなりません。また緊急の連絡を除いて、通常の職員会議の議題や連絡もしてはいけません。この問題行動と生徒の報告および指導原案を決定するための臨時の職員会議です。)

職員会議では今回の報告のほか、臨時拡大生活指導部会と内容も手順も同じです。事実確認の内容や反省文などは、全員分は必要ないでしょう。口頭で説明でもかまいません。不要なプリントは会議後にシュレッダーしてしまうのもその前の会議と変わりません。管理職の先生には会議前にあらかじめ事実確認に指導原案の内容を加えたものを渡して説明をしておきます。

指導内容の原案の了承を得られ次第、保護者に連絡をします。

4)生徒への指示と保護者連絡

他の部屋で拘束していた生徒は、他の生徒と接することのないよう「スマホも預かった状態のまま」6限の授業時間中に帰宅させます。放課後だと他の生徒と接触してしまうので先に下校させ、帰宅後すぐに学校に着いた旨を本人から電話連絡させます。必ず電話で無事を確認します。衝動的に自殺を図ることなどないよう、よく観察しておきます。本人の情緒が不安定であれば保護者に迎えに来てもらいます。

学年の先生と生活指導部主任は、管理職とも打ち合わせして、翌朝の始業前の時間に、生徒本人と保護者を校長室に呼び出し「申し渡し」をする準備をします。

同時並行で学年の生活指導担当の先生と生活指導部の先生は、「反省日誌」の準備、主要教科の先生に謹慎中の「課題」のお願いをすぐにします。また翌日から始める「別室指導の監督者分担と割当の確認」をして、受け持っている時間割から授業の無い時間に、複数割り当てをして、お願いをします。


    申し渡し  

1)申し渡しの流れ

臨時職員会議を受け「申し渡し」です。謹慎指導はここから始まります。

生徒と保護者同伴で時間と場所、主に校長室に呼び出しを受けます。学校長から「どうしてあなたが学校としての処分を受け、反省をしなければならないのか」その説明があります。それが「申し渡し」です。謹慎解除になる時にも「申し渡し」があってはじめて解除となります。

担任は生徒に遅刻の厳禁、髪型や服装に乱れが無いようあらかじめ指示しておきます。また保護責任者である保護者も原則校長室で同席します。仕事や下の子の保育園引率などでどうしても不可能な時は、なんとかして前日の夜などに行われることもある。しかし、都合をつけてもらいましょう。この申し渡しが行われないと謹慎指導はスタートしない。(最近では問題行動を起こした当日の聴き取りにあたる日も、指導の一日としてカウントする事例も稀にあります。そこは学校の判断次第です。)

担任が教職員玄関から生徒と保護者を確認して案内。時刻になったら進行役の先生が仕切って、挨拶、校長からの話、生活指導部主任からの話、終わりの挨拶、それで申し渡しは終了。その後、時間があれば学年主任や担任から保護者と生徒を残して話すこともあります。

2)申し渡しの時に話しておくべき内容

学校としては生徒一人ひとりの学校生活を守り、そのためにルールを逸脱した言動に対して毅然とした態度で指導していく、ということを強く伝えます。しかし、それと同時に生徒の反省と今後について見守っていく、ということも伝えておきましょう。我々教員は立場的に子どもたちに対して警察官のようなことも求められ裁判官のような判断も時には必要となります。でも、我々は警察官でもなく裁判官でもなく「先生」です。その立場で今後の生徒の指導をしていく、ということをあらためて保護者にも伝え、また家庭での指導もしっかり協力してもらう。その確認をします。

その後すぐに生徒は謹慎に入ります。用意された「反省日誌」と「課題」を渡します。謹慎指導は「自宅謹慎」の場合と学校に登校して別室指導を受ける「登校謹慎」があります。現在の公立高校では登校謹慎も少なくありません。

担任など担当する先生は、当該生徒と保護者に、以下のことを漏らさず伝え、約束させます。

〈  約束事と声掛けのポイント  〉

●  他の生徒と接触させない。電話もしない、させない、話さない。スマホも謹慎解除まで返却しない。

●  自宅謹慎の場合には学校に定時連絡を。

●  登校謹慎の場合には別ルートでの登校と別室での課題の取り組み。下校後には定時連絡。

●  謹慎の別室監督を割り当てられたいろいろな先生からの話を聴いて反省する。

●  謹慎中に反省して考えたこと、学習課題への取り組みの程度、毎日の過ごし方についても、反省日誌に書く。保護者にも毎日書いてもらう。「のちに先生方や校長先生が謹慎を解除させるかどうかの材料になるんだよ」と伝えます。

●  そして、こう伝えましょう。お前自身が「もういいや」とか「謹慎マジ無理」とか思った時点で、もう先生はお前を救えなくなる。本気で「自分という人間を変えなきゃ」って頑張っていこう、と励ましてあげます。人間、誰しもやらかしてしまうことはある。そして若い時ほど後先考えずに間違いを起こしてしまうもの。大切なのはそれに気づいて自分と向き合うことと、向き合ったあとですから。それをしっかり伝えて「お前がキレない限り、先生たちは見守って支えていくつもりだよ」「これを機に変わり成長していくお前を見るのが、先生はある意味楽しみだよ」とメッセージを送って、謹慎指導をスタートします。

今回はここまで。次回は「謹慎中の指導および解除」について、具体例を挙げて何について「どう声掛けをして何を考えさせるか」など、かなり細かな指導内容まで踏み込んで助言していきます。特に若手の先生で、生活指導経験の浅い先生にはよく読んで欲しい。お楽しみに。