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「ホームルームで話しておきたいこと」


今回の「先生学」のテーマは、「ホームルーム」でクラス担任として話す内容について。この内容はクラス通信や学年通信、さらには学級日誌のコメントなどにも活用できると思います。

我々教員はとにかく忙しい。ホームルームにおいても子どもたちに対して保護者向けプリントを配布してその連絡や報告で終えてしまう、またはつい説教っぽくなってしまう。それもたしかに日常。それも大切で必要なことなのは言うまでもありませんがそればかりでなく、毎日のホームルームだからこそ「今日はこんな話でいこう!」と思えるように、話すべき内容を整理してみます。子どもたちから「先生ってなんでも知ってるなぁ」とか「いろんなことを知ってるから個人的にちょっと話をしてみたい。相談してみたい」と思わせる。そんな風に関係性を築けたら素敵ですよね。ホームルーム担任として是非とも「話のバリエーションを持ちましょう!」というのが今回のテーマです。

まず、全体の奉仕者でもある教員ですから、次の二点は当然のことでかつ常識だと思いますが、一応確認しておきます。

前提

●  保護者や他の教員が見ても思想信条的に偏り過ぎない「誰が見ても聞いても大丈夫な内容」を話す。

●  個人についてはその対象生徒の名前をあげるとき(あるいは匂わすとき)には「褒める内容」が大原則。

さっそく項目別に見ていきましょう。


    指導方針  

●  挨拶・自己紹介

●  学校の校訓・教育方針

●  クラス方針・指導方針(学級経営方針)

●  子どもたちに期待していること・こういう人間になって欲しいということ

①の指導方針については入学後最初のホームルームや、進級してクラス分け後の最初のホームルームで話しておきたい。特に入学後のホームルームではその学校の生徒と先生の雰囲気などにも触れて、子どもたちの緊張と緩和をバランスよくしてやる。そういう話をしておきます。またクラス方針などは高学年や高校生ともなれば故事成語や英語の名言などでもいいでしょうが、難しい言い回しよりも「誰かのかげ口をSNSで匂わせるとか卑怯なこと、先生は受け入れられない。許さないよ」「決められた仕事をきちんとする、例えば掃除をサボらない、そういう子を先生は信用するし、先生は守る」など、具体例を挙げて話した方がわかりやすいと思います。


    行事関係  

●  学校行事ネタ

遠足・校外学習、運動会・体育祭、文化祭、球技大会、合唱コンクール、修学旅行、卒業を祝う会など、クラス単位で準備すべき様々な学校行事があります。そこではクラスでの班分け、役割分担、クラスでの練習の告知とともに、それらを踏まえた良い例、悪い例を「先輩の取り組み例」などを紹介しながら伝えたいですね。「そんなの俺たちじゃできないよ」というレベルではなく、リアリティーを持たせられる具体例を挙げて示唆してあげましょう。


    生活関係  

●  学校生活のルール・規則

●  学習への取り組みとその見直し

時間を守ること、整理整頓、周囲の人への挨拶や言葉遣いなどのほか、教室や廊下の清掃、部室の掃除について、みんながやるべき義務をきちんとやっているのか。

また授業中の取り組みはどうなのか。騒いでない、寝ていないとしても自分の目標をきちんと決めてそのための取り組みをしているのか。苦手科目でも努力して克服しようとしているのか。自分の進路の実現のために高い志を持って宿題以上のことをやり、さらなる高みを目指して取り組んでいるのか。(このことは部活動や行事に関しても同じことが言えますね。)

これらのことは生徒との「個人面談」や保護者も加わる「三者面談」においても、振り返り約束して細かくメモしておきます。そしてホームルームでもあらためて「みんなさ、前に面談した時に約束して頑張ろうって決めたはずだよね。今は個人的に誰がとか具体的に家で勉強をどれくらいするって決めたか、なんて言わないけど」とクラスみんなの顔を見ながら全体で振り返ることができるようにします。


    進路関係  

●  進路について

進路関係のポイントはいかに子どもたち自身に自分の問題として考えさせられるか。先送りせずに考えてみようと思わせるか。リアリティーを持たせられるか。生徒一人ひとりが焦って切羽詰まって「私、やらなきゃ。考えなきゃ」と考えさせられるか。ここでは、先輩達の例、卒業生や教え子の具体例を挙げておきたいですね。成功例は是非成功した卒業生の名前を出して紹介しても良い。失敗例は生徒名は伏せて、しかしその失敗の原因を話してあげたいですね。


    社会的内容  

●  ニュース

●  日本の文化・歳時記

●  学校の歴史

●  地元・地域情報

「ニュース」については、昨今のニュースやトップニュースになった時事ネタも話します。社会的な問題点、中高校生には同世代を対象とした内容(部活においてはその競技種目やジャンルなど専門的なニュース)なども、関心高くこちらに顔を向けて聴くはずです。「日本文化」については二十四節気、月の異名など。たとえば二月三日と節分の意味。国民の祝日のその日のいわれなども。現在の「クールジャパン」に該当するアニメやゲームでもいいでしょう。「学校の歴史」については、けっこう生徒は話を聞きますし、彼らの受験面接時に役立ったりもします。「地元・地域情報」は、地域の歴史を知り地元愛にもつながるようなものが良いでしょう。


    大人のひとりとして  

●  先生自身の価値観

●  故事成語・名言

●  最近読んだ本、最近見たテレビ番組

●  先生自身の趣味

「先生の価値観」については人生において大切にしていること、それを自身の体験談を交えて話します。時には面白く、時には感動的に。「故事成語・名言」については、著名人の言葉でもいい。伝記になっているような偉人や有名人ばかりではなく昨今の著名人、例えば最近のノーベル賞受賞者の言葉なども、帰宅後にご家庭での会話のタネにもなったりして良いですね。「最近読んだ本・見たテレビ番組」などは、生徒でも数名が知っている内容だとやり取りも出てきて興味を持たれます。「先生の趣味」については、スポーツや芸術などのほか、ご自身の授業や担当教科から離れている分野であればあるほど魅力的です。実はオタクチックなものほど良い。(あくまでも生徒が引いてしまわない内容のもので。笑)経験のある先生もいるかと思いますが、その後に生徒からの声掛けがありお互いに親近感を覚えて関係性も良くなります。それによってその後のホームルームでもしっかりと話を聴いてくれるようになります。


  終わりに  

先生方の指導している生徒は当たり前ですが「子ども」です。どんなに勉強ができても身体が大きくても子どもです。大人になるための進化していくための道の途中にいます。未熟であるのが当たり前なんです。(ついつい我々は勉強ができる生徒だとなんでも克服して解決できるだろう、とか、体が大きい生徒だと健康で無理が効くだろうと考えがちですが、実際はどうでしょう。概してその反対で、勉強ができる子ほど精神的に幼くて自己中だったり、体の大きい子ほど体調も崩しやすくメンタルも弱かったりしませんか?)  だから我々先生がまず彼らに「刷り込む」面があるのは普通のことです。一般常識や知識も刷り込みがまず必要。その常識をもとに子どもたちが考えたり疑ったりすればいいんです。

その次に生徒自身が振り返る時間や考える時間を作り出すホームルームにする。失敗を反省して次に活かす。最初は予想して予測して、次に計画して取り組むことができるようにする。個人レベルでは授業への取り組みが教科担当者から低い評価になることがないように努力することを考えて取り組んだか。クラスレベルでは行事が他クラスに比べて遅れずにつつがなくできるように、クラスや集団内で発言し協力しているか。人間関係でも良い方向で活かせると良い。たとえば人に優しい言葉をかけると、その印象から優しい対応が返ってくる、という大人なら誰もが知っている因果の法則。

いずれにしても子どもたちの耳に届くような話し方、いわゆる聴かせるテクニックも必要です。自分の場合はついつい一方的に話してウケることを目指してしまう若手教員でした。が、今はその部分を残しながらも、ホームルームでやり取りした生徒からの声や意見をキッカケに話を進めて、自分の話したいことに持っていくようにしています。まずは質問や問題提起から。そういったものも準備、経験、タイミング、話術など様々な要素が不可欠だと思います。同じ内容でも、話の上手な先生って、やっぱり大人の我々の心にもガツンと残るじゃないですか。そういった話し上手な先生を目の当たりにすると、やっぱり「話し方」や「流れの作り方」も学んでいかねばなりませんね。私自身もスピード感は今の若手のお笑いのやり取りを参考にしつつ、間の取り方などは「落語」を参考にしています。


また、入学後の最初のホームルーム、低学年のクラス分け時、クラス内が緊張し過ぎている時などには、フルーツバスケットや他己紹介ゲームなど、いわゆる「アイスブレイク」という手法も、学んでおいて経験してみると良いでしょう。我々先生はいくつもの引き出しを日々増やして準備しておかなければならない。少しずつその引き出しを増やしていきましょう。話してみてハマる時もあれば、ちょっとスベってしまう時もある。でも、すべては先生自身の経験値。そしてそれもすべて生徒のためです。いろいろ準備していきましょう。