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「コロナ休校明けに取り組むべきこと」


コロナ感染者拡大防止と長期の休校(正式には「臨時休業」と言います)により、学校現場は大きな変化と今後について対応を求められています。さまざまな教育活動が変更を余儀なくされる中、体育祭や文化祭、宿泊を伴う行事などの中止、大きなものでは夏休みの短縮が決まりました。感染拡大防止、そして予防対策を取りながら授業確保をして休校中の授業時間を取り戻すためですね。東京都では公立学校が8月のお盆の時期に2週間ほど、私立校では1週間にとどまる学校も少なくありません。そして、臨時休業中つまり自宅学習期間の学校の指導方法を見ますと、課題を課した学校が96%とほとんどであったのに対して、オンラインツールを活用した授業の実施はアンケートによるとわずか20%にとどまっていました。その臨時休業中の学力を把握する予定の学校も68%ですが、そのほとんどは先生作成のテストを実施するなどして課題を評価する予定、との数値が示されています。(2020  4月〜5月 Benesse High School Online調べ)つまり今現在から夏休みまでの短期間で、提出させた課題の見極め、定期考査で休校明けの授業内容を評価、成績処理もミスなく行いながら、志望進路の確認と進路・選択科目指導、学校行事の選定し直し、部活動の再開なども同時進行で求められるという、ある意味、先生にとっては例年以上に忙しくなる学期末ということになります。では、どんなことを準備しておかねばならないのでしょうか。大枠を整理して具体的に示していきましょう。


★  1 教員間 

1)学年団

→  ①「学年行事」の見直しの確認

学校全体の行事見直しは管理職や教務部が主導で企画調整会議などを経て決定します。体育祭、文化祭、合宿祭などの取り止めが指示されていることがほとんどのようですね。学年単位では外部との調整が必要な進路関係の行事や修学旅行などを話し合い、方向性を確認しておきます。その他、学年の成績にまつわる会議などの日程調整、球技大会の実施の有無、生徒会の役員選出のための根回しなど、見直しや小改訂は少なくないはずです。

→    問題生徒の把握

欠席生徒の体調チェック、特に発熱のあった生徒については当然この状況ですから、本人だけでなく保護者との電話連絡は必須です。そして休校が長引き生活リズムが乱れてしまい遅刻や欠席がちな生徒の状況の把握をしておきます。


2)分掌、他学年との確認

→    「出席停止」の扱いについて

本人がコロナの感染するのはもちろんのこと、その家族が感染してしまった場合は、当然「出席停止」扱いが妥当。そればかりでなく「感染のおそれや疑い」があり欠席した生徒についても、出席停止として扱うかどうか校内で共通理解を図っておきます。

→    「学校行事」の見直しについて

学年の意見をお互いにすり合わせる作業をします。学年の保護者会や進路指導に関する行事、または小規模での球技大会など、継続可能な行事や中止になってしまった行事の代替イベントなど、できる範囲内での行事を検討します。

→    授業日数や成績処理日程の確認

おそらく慌ただしい学期末になると思いますが、他学年と足並みを揃え、学校としてどうなのか明確にしておきます。


3)教科会議と教科担当者同士の確認

→    指導内容について

授業時数の確認と単元や授業内容で共通して抑えて指導するべきものの選定をします。駆け足で表面的にさまざまな分野と項目をざっくり説明するのか、教えることを小さく絞って時間を掛ける項目と自分でやっておけと指示しておくのか、担当教員で違いが出ないようにします。

→    休校中の課題評価と成績について

このことも生徒や保護者からクレームの出ないように、評価基準を明確にしておきましょう。それにしても今回の学期については日数も短く授業も駆け足だったはず。テストばかりでなく課題の評価も含めて少し緩めになるのはやむを得ないところでしょう。


★  2 ホームルーム経営 

→    クラス生徒の把握と関係作り

係や委員の分担は終わっていると思います。しかし行事が激減しているので、関係作りは例年通りにはできませんね。早く仲良くなるためにいろいろレクリエーションもやりたいところですが、今の状況では接触系レクなどは我慢が必要。昼休みの給食やランチなどでも感染予防のため向かい合っての食事は避ける、直接手づかみするサンドイッチやおにぎりの昼食は避ける、との指導もありますね。寂しいですがマスクもできない食事に関しては近距離で向かい合っては飛沫感染予防の観点からたしかにNGです。それでも、学級日誌で一人ひとり挨拶させたり、自己紹介シートを作ってクラス掲示するなど、工夫しながら人間関係作りを少しずつしていきます。

→    二者面談

短時間で全員をまず済ませます。そのため聞く内容は絞ります。問題のある生徒は再度時間を作ってあらためて個人面談。あるいは保護者も同席してもらい三者面談。生徒の状態が良くないときはスクールカウンセラーの予約と面談も勧めます。今の時期は「担任としてクラス生徒全員と面談をした」という事実が重要です。

→    定期考査・受験に向けての指導

短い期間の授業日だからこそ試験範囲も限られてるはず。休校中の課題の範囲も振り返らせしっかりと取り組ませたいですね。わからない単元については教科担当の先生に積極的に質問に行かせます。そして2学期以降にも繋がることを考え今の段階で習得しておくべき内容をこぼさないように繰り返し話しておきます。

→    来年度選択科目調査に向けての指導

いわゆる大学受験であれば国公立大と私大、ほか専門学校。あるいは就職など志望進路の確認。それに繋がる文理選択。こちらも本来なら1学期からホームルームや総合学習などで時間を掛けて考えさせるべきこと。しかも今年は学校説明会やオープンキャンパスも続々と中止かオンライン化に変更。限られた中で進路部含む先生方から今までの体験談を語り、オンラインでの説明会参加方法の紹介と資料も取り寄せる方法を伝えて進路指導もやるしかなさそうです。


★  3 授業 

→  指導内容と進度の確認

今年度はできる範囲の中で最低限抑えておくべき事項や単元を指導します。生徒にもそれを伝えておきます。(隠すことなく授業で扱えない単元や項目についても伝えておきます。実はこれは重要です。)アウトプットの小テストについては複数回やっておきたいところ。大幅に減ってしまった授業時数との兼ね合いもありますが、テストのためでも勉強をさせるには必要。また、授業で扱う内容が「広く浅く」になるのであれば、補助的な課題やプリント、あるいは自学自習できる問題集を与えて取り組ませましょう。


★  4 部活動 

→  こちらは、今年は焦らず、部活動をできること自体に喜びを見出す、そういうレベルになると思います。また部活動によっては、体力低下により例年より危険を伴うことも予想されます。先生側も無理せず指導して「もう少しやりたいのに」と子どもたちが感じるくらいで十分です。むやみに接触せず、密を避け、消毒などにも気を配る。活動内容のメニューなどにも工夫して「落ち着いたら全力でやろう」と声掛けし、保護者にも理解を得て支援をお願いします。

またチーム登録と選手登録、大会の有無とその参加について、大会自体のルール変更などについて、中体連や高体連の専門部に連絡してみます。コロナ感染拡大の予防と部活動の段階的練習方法など専門部の立場から提示されているものもご自身の現場でも導入するために、いろいろ確認しておきます。

そして、夏休みに実施が禁止となってしまった「夏季合宿」の今年度予算を、来年の3月春休み期間までの合宿に振り替えて変更できるかどうかを検討して申請しておきます。もちろん、この変更が可能なのかどうかも今後の状況次第ですが。


(終わりに)

東京都をはじめ感染者数も減らず、医療機関も余裕もなく疲弊し、まだまだ落ち着いて対応できていないのが現在の我が国の社会の実情。学校は、実は社会環境の中では換気や消毒指導などかなりしっかりと取り組んでいるのですが、残念ながら人が集まるのも学校。コロナ感染のリスクは校内でもまだしばらく収まらないでしょう。その中で「withコロナ」の学校生活を送るわけですから、できることは、その範囲は本当に限られる。そこを割り切って我々は準備すべきです。必要以上に悲観せず、現実を直視する中で子どもたちに提供できることを準備、対応していく。それも教員個々でなく、その学年だけでもなく、その学校の教職員が一枚岩となり共通認識のもとで対応していきたいものですね。子どもたちの学生生活は人生一度きり。先生方が真摯に準備して対応すれば、子どもたちも保護者の方々も、今の社会状況にやるせない気持ちではあっても、我々の取り組みに納得してくれるはずですから。